「さ、これで準備は整いましたよ」
空の注射器がワゴンの上に戻され、ひっくり返された砂時計が時を刻み始める。
「あ…ううっ…」
「あまり上品な趣味とは言いかねますが、世の中には色々な嗜好の方がおいでなのでね」
強烈な排泄の欲求がシグの下半身に集中し始めていた。
両手で前を押さえつけ、肛門に力を入れてこらえるシグの額には脂汗が浮かんでいた。
前屈みになりながら小刻みに身体を震わせ臨界を耐えるシグの尻を、男の手が割り開く。
「…やめっ…て…くだッさ…い…駄目ッ!」
ぴゅるっと一筋の液体が飛び出しシーツに薄い茶色の染みをつくった。
「〜〜〜〜〜ッ!」
黒ずくめの男の唇に酷薄な笑みが浮かんだ。
「では、皆さん。よろしくお願いします」
ぎらついた欲望を剥き出しにした研究員達の手が、シグの四肢に伸びてきた。
「だ、駄目です! 触らないで下さいっ! やめてーっっ!!」
もがいた拍子に股間を押さえつけていた力が緩み、一瞬尿道が開いた。
押し寄せる尿意を数滴の漏れだけで食い止めたシグは、奇妙な感覚に襲われ身をすくめた。
「あっああッ…」
ペニスの先端から這い上がってくる痺れにも似たそれは、快感と言ってもよかった。
腰にわだかまる得体の知れない疼きに無防備になっていた尻が浮いた。
そのままうつ伏せに両肩をベッドに押し付けられたシグの背後でモーター音が響いた。
その音を発している物体が何であるか、振り返り確かめるまでも無かった。
今ソレを挿入されたら。
シグの顔から血の気が引いた。
「…や…やめて…挿れないで…」
下卑た忍び笑いがそこかしこで聞こる中、近付いてくるモーター音がふっと途切れた。
ほっと安堵の息をついた次の瞬間、ソレはシグの肛門に衝き立てられた。
「いッ、いやぁああああ―――っっ!!」
中身を漏らすまいと締め付ける孔を、成人男性の標準よりも一回りは太いであろうバイブが、ぐりぐりと侵略してゆく。隙間から滲む液体が、皮肉にも潤滑剤の役割を果たしていた。
「うあッ…あああああッ! やめて! やっ! ひぃあッ…うああああっっ!!」
ベッドから引き摺り下ろされたシグは、床に置かれたステンレスの大きなトレイの前に運ばれた。
両腕を掴まれ、両膝をついた姿勢で立たされる。
周囲には防水処理を施した小型のカメラが、下からのアングルで「その瞬間」を待ち構えていた。
「で…きません。お願いです。トイレに、トイレに行かせてください」
涙ながらの懇願も、男にとっては予定通りのセリフだったらしい。
「だからココに連れて来てあげたじゃありませんか。ココならベッドを汚す心配もないですし、後始末も簡単ですから、安心してお出しなさい」
こめかみのあたりがズキズキと痛み、吐き気すら覚える。もう、限界だった。
研究員の一人がシグのペニスを掴み、トレイの中央に先端の照準を合わせる。
バイブのスイッチが入れられ、シグの最後の逡巡は吹き飛ばされた。
「う…あ…ああ…ああああ〜〜〜っっ!」
降り始めのスコールのような音を立てて、トレイに勢い良く薄黄色の飛沫が上がった。
シグを押さえつける男達から感嘆の溜息が漏れる。
「あっ…っく……ううっ…」
ぎゅっと目を閉じ、嗚咽とも喘ぎともつかない声を漏らすシグの身体が、両脚を広げた格好で持ち上げられた。
「嫌……嫌だ……許して…」
研究員の一人がシグの尻で蠢くバイブをぐるりと捻って軽く引き出した。
「駄目ッ! 抜かないで! 出ちゃうからッ! お願…ッ!!!」
スイッチが入ったままのバイブが水気混じりの破裂音と共にトレイの上に落ちた。
直腸内に残っていた茶色い固体が、ブ、ブブ…とくぐもった音を立てながら蠢くバイブの上に降りかかる。シグの絶叫が、室内に響き渡った。
「いやだぁ―――っっ!!」
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