咎狗の血シリーズ
「んっ……は……っっ!」
――― 『誘ったら、いけないのか?』 ―――
――― 『ぼけてる俺とじゃ、嫌なのか?』 ―――
アキラはベッドに強く押さえつけられながら、自分の発した言葉の威力に驚いていた。
昼中ずっと感じていた源泉のよそよそしさが気に入らなかった。
近くに居るのに、蚊帳の外に置かれているような空気が嫌だった。
SEXがしたいと思ったわけではなかったが、それ以外に源泉を振り向かせる術など思いつかなかったから、源泉の言葉に乗った。
誘い方なんて知らない。
源泉がそう言ったから、その通りだと答えただけだ。
ただそれだけで、頬に触れた源泉の掌はすでに熱く、瞳には雄の輝きが宿っていた。
目を細め近付いてくる源泉の、薄く開いた唇を受け止める瞬間、背筋がぞくりと震えた。
全身に降り注ぐむさぼるようなキスは激しい雨に打たれるようで、時折ちくりと肌が痛んだ。
源泉の舌が肌を這い、指先が胸の突起をこね回す。
大きな掌がふとももの内側を撫で、尻を揉んだ。
源泉に触れられた部分から熱と痺れが広がり、意識せずとも腰が跳ね、欲望が頭をもたげる。
何度繰り返されても慣れることなく全身を翻弄するこの感覚が、快感と呼ばれる種類のものだと自覚するようになったのは何時の頃だったろう。もっとも自覚したからといって自分でコントロールできるものでもなく、それはむしろ回を追うごとに強く、激しくアキラの感覚器官を支配するようになっていた。
本来は排泄器官として機能している部分にオイルが塗り込められ、徐々に性器としての柔軟性を持ち始める頃には、アキラの腹の上は、自身が吐き出した白い飛沫でぬめ光っていた。
「アキラ……」
弛緩した身体が折りたたまれ、視界のすべてが源泉の厚い胸板だけになる。
次に来る衝撃に備えて深呼吸をひとつ。
吐き出す息に合わせるように、源泉はゆっくりと挿入してきた。
ぬめった先端が、入り口をつつくようにしてから入り込んでくる。
まるで部屋に入る前のノックのようだと思うとなんとなく可笑しさが込み上げてきた。
アキラの口元に微かに浮かんだ小さな笑みを、源泉はどう解釈したのだろう。
絡みつくような視線を感じて顔を上げれば、熱く潤んだ瞳がアキラを見下ろしていた。
身体を折りたたまれている所為だけではない息苦しさが、アキラの胸を押し包む。
「あ……ん……っふ!」
呼吸のために開いたはずの唇は甘い息を漏らし、すべてを吐き出す前に塞がれた。
深く繋がった部分から背筋を昇って伝わってくる、痺れるような感覚が唇で折り返し、甘い疼きとなって腰に溜まる。
「んっ……んんっ!」
腰に溜まった疼きは出口を求めて、再びアキラ自身を勃ち上げた。いっぱいに広がり、源泉を受け入れているそこがひくつくのが、自分でも判る。根元まで埋め込まれた源泉自身の質量は圧倒的で、軽く揺すられるだけでも目の前に火花が散るようだった。
「んはっ! ……はあっ……はっ……う……んんんっ!」
深く穿たれた尻と塞がれた唇から与えられる刺激がアキラを絶頂へと連れ去ろうとする。
このままではまた自分ひとりが達かされてしまう。
アキラは必死で首を左右に振り回し、源泉の唇を振りほどいた。
「だ、め……だ……また……ッ!」
「イケばいいさ。何度でも」
普段の口調より幾分荒い、けれど甘さを含んだ低い囁きとともに、源泉の掌がアキラ自身を握りこんだ。軽く上下に扱きながら親指の腹で先端をくりくりと捏ねる。
「い、やだ……」
「嫌なのか? こんなになってるのに?」
先端から滴る液を指ですくった源泉は、その濡れた指先をアキラの乳首にこすり付けた。
「――ッ!」
「こっちも、勃ってるぞ?」
「……俺、だけ……イ…クの、……や……って……」
「いいじゃないか。感じてくれてオイチャンは嬉しいぞ」
からかうように乳首をきゅっと摘まれ、ますます募る射精感に身震いがした。
かぶりつくように押し倒してきたくせに、余裕を見せ付ける態度が悔しい。
快感だけが欲しいわけではない。
「くッ……こ、の……ッ!」
「うッ! ……待てアキラ、そんなに締められた、ら……ッ……」
「アンタも……イクんだ……よッ……」
「〜〜〜ッ! ば…っか、やろう……ッ!」
源泉の動きから、余裕が消えた。
両脚を膝裏で掴んで広げられ、浮き上がったアキラの尻に容赦の無い抜き差しが開始された。
「うあぁっ! あっ! あっ! 待ッ……はぁッ!」
激しい突き上げにずり上がるアキラの身体を引き戻し、逃れようと捩る動きに併せて裏返す。
反動で繋がりが解けた。
熱の塊がずるりと抜け出していく感触に、アキラの全身に痺れが走った。