咎狗の血シリーズ
素顔のままで
時刻はとうに午前0時を回っていたが、室内の灯りは煌々と照ったままであった。
消してくれという懇願も虚しく、昼間のような明るさの中でアキラの白い肌が跳ねる。
「――はッ! ……く……ぅ……ぁ……あああッ!!」
「どした? そろそろ降参するか?」
いやらしい笑いを貼り付けた源泉の顔が、膝裏で持ち上げられた脚の間からのぞき込んできた。
「〜〜〜ッ!」
アキラの両の手首は頭上でひとつに括られ、ベッドの柵に繋がれていた。
下半身だけを裸に剥かれ、ペニスをしゃぶられた。
絶頂まであと一息というところで刺激は遠ざかり、陰毛を押しのけてそそり立ったままのペニスの根元には、射精を堰き止める為の紐が巻きつけられた。
――― 一人だけ達かされるのは嫌だ ―――
いつものように源泉の手が下りてきた時、確かにそう言った。
その事を否定するつもりはさらさら無い。
だが、それがどうしてこういう事態を引き起こしてしまったのかが判らない。
両手を拘束されている所為で、口元を覆い声を殺す事も、シーツを掴んで快感を逸らす事もできない。源泉の手が尻に添えられ、左右に開かれる感触に身がすくんだ。
明かりの点いたままの部屋。
露わにされた秘部。
「穴の奥まで見えそうだぞ、アキラ」
じっくりと観察するような視線だけでも羞恥で脳が沸騰しそうだというのに、この男は――。
エロオヤジと罵声を上げるより早く、尻の穴が湿った何かで覆われた。
「――ッ!? アンタ、なにやっ……ッんぁッ!」
源泉の舌が、すぼまりの中心をぺろりと舐めた。
そのままちろちろと襞の一つ一つを舐め解そうとする。
「そんなトコ舐め……あッ! ……ん……んん〜〜〜〜ッ!」
「なんだ? 前も舐めて欲しいのか?」
「違っ―― はぁうッ!!」
真っ赤になって張りつめたペニスの剥き出しになった先端を源泉の舌が嬲り、唇が扱く。
同時にガラ空きになった尻には、何の遠慮も無く、無骨な指が侵入してきた。
くにくにと内壁を押し広げ、前立腺を刺激する。
「――ッ! ッッ!!」
普段ならとっくに果てているような愛撫を執拗に繰り返され、苦痛と快感が入り混じる感覚に視界がかすみ涙がこぼれたが、アキラは唇を噛み締めて堪えるだけだった。
「ったくお前さんは……」
呆れたような、少し怒ったような声で呟いた源泉は、いささか乱暴な手つきでアキラの戒めの全てを取り払うと、床に投げ捨てた。
身体の自由を取り戻しても、アキラは顔を背けたまま、動こうとはしない。
その様子に溜息をついた源泉は、ベッドから下りると黙ってドアの方へ向かって歩きだした。
(――――えっ!?)
遠ざかる気配に慌てて起き上がろうとするが、縛られていた所為で腕に力が入らない。
よろけていると部屋の明かりが消され、一瞬のうちに暗闇がアキラの視界を埋めた。
「……オッサン……?」
明かりを消して戻ってくるのは判ったが、すぐには目が慣れず距離感がつかめない。
ベッドサイドのライトのスイッチを探していると、背後で衣擦れの音がした。
着ていたシャツを脱ぎ捨てたのだろう。乾いた音が床に落ちる。
ズボンのジッパーをおろす音がやけに響き、下着もろとも乱暴に脱ぎ捨てている気配が伝わってきた。ベッドが軋み、源泉の気配が間近になる。
アキラの喉がごくりと鳴った。