九龍妖魔學園紀シリーズ
「よし。さっきんとこまで来たな」
持ちきれないからと開錠せずに置いてあったお宝を回収し、最初に撤収した地点まで戻ってきていた。
性懲りも無く現れた化人と追手の連中を再度ぶっとばし、一息つく。
「なんか……さっきよりしんどくないっすか?」
「そりゃ、響がいないからだろ」
「はぁ? アイツなんてびびってきゃーきゃー喚いてただけじゃないっすか」
「だーかーら、ここいらの連中はあの”声”が苦手なんだよ。気付かなかった?」
全然。まったく。
じゃ、この人は始めっからアイツの声目当てでこんな場所に誘ったって言うのか?
……なんとなく、ちょっと、軽くむかついた。
(アイツ、暑いトコ苦手なのに………はっ!?)
ってそんなことじゃない。今はアイツの事より俺の事だ。アイツが声なら俺は……
「夷澤〜〜」
俺と1cmしか身長の違わないはずのセンパイの声が頭上から響いた。
梯子を上った先に匍匐前進でようやくくぐれる穴がある。声はその奥からだった。
「よっ……と。センパイよくこんな穴見つけましたね」
汗でずれた眼鏡を直しつつセンパイを見れば、やたらと上機嫌でHANTをいじっている。
「へへっv なぁなぁ、ちょっとメールしてみ?」
「誰にっすか?」
「俺」
「はぁ?」
「いいから、いいから」
言われたとおりに空メールを送る。
送ってから、”愛してます”とでも入れてやれば良かったと思った。
もしくはいっそ ”やらせて下さい”とか。
……頼んでどうする、俺。
「のわっ!?」
いきなりの大音響が鼓膜を直撃した。
どこかで聞いた事があるようなないような曲。
「新しい着メロGET〜vv しばらくこれにしよーっと」
「……そりゃ、オメデトウゴザイマス」
たださえ狭ッ苦しいスペースでわざわざボリューム最大で聞かせるほどのもんじゃないだろうに。
この人が、学園を占拠した連中と同じお宝を探してる《宝探し屋》かと思うと頭が痛くなってくる。
「で、どうするんです? そろそろ先に進んだ方がいいんじゃないんすか?」
「んー。もうちょっと涼みたいかも。夷澤、頼んでもいい?」
(やっぱり、そうくるかよ)
判ってはいたが、こうも面と向かって言われると文句をつける気力も萎える。
しかも俺の一番好きなあの笑顔までついていては、黙って拳を振るうしかない。
「あ、違う違う」
「は?」
しぶしぶ立ち上がり拳を構えた俺を、センパイはにこやかな笑顔で手招きした。
嫌な予感がする。が。身体は勝手に引き寄せられていた。……犬か、俺は。
一瞬脳裏に尻尾を振ってセンパイに駆け寄る自分が見えて目眩がした。
さらには、それもいいかもと思ってしまった俺って一体……。
「夷澤も脱ぎなよ」
「はぁ!?」
すでにベストと上着を脱いでいたセンパイが、アンダーシャツに手をかけていた。
風呂場で見るのと違い眼鏡越しの生裸は鮮明で、薄く汗ばんだ肌の様子まではっきりと判る。
上半身裸になったセンパイの手がズボンのベルトにかかる。
……ってちょっと待て!
「アンタ、どこまで脱ぐ気ですかっ!?」
「え? ベルトのとこに汗たまって気持ち悪いから、風通そうと……」
「まぎらわしい真似しないでくださいっっ!!」
わざとか? それともやっぱり天然なのか? 俺はこのヒトのこういうところが判らない。
いや、男同士なんだから、パンツ一丁で涼んだって全然、まったく、問題はないんだが、今の俺はその姿にはなれない。絶対なれない。つーかもはや一歩も動けない。
ポケットから両手を出したら……バレる。
……もっと太いズボンにすりゃ良かった。
「夷澤?」
すっとぼけた顔であのヒトが俺の前に立つ。1cmしか違わない身長では目の前が顔だ。
そのままするりと抱きつかれた。俺は全身が、特に股間の一部が重点的に硬直するのを感じた。
「ちょっ! 暑いって言っといて、何抱きついてんすか、アンタはッ!」
「ん〜〜〜〜〜。やっぱ服着たまんまだとイマイチだなぁ」
「うわっ! やめっ……うひゃッ」
有無を言わせぬ手早さでガクランを剥ぎ取られ、Yシャツのボタンに指がかかる。
滑るように動く器用な指先に気を取られているうちに、アンダーシャツまでひっぺがされた。
……本業は追い剥ぎじゃないのか? このヒト。
むき出しになった俺の胸に、センパイの裸の胸がぴったりと張り付いてきた。
ひんやりとした感触が気持ちイイ。…え? ひんやり?
「砂漠なんかじゃ、外気温が体温より高いから、こうやって涼をとるんだよ」
(だったら最初っからそう言えよッ!)
呆れて一瞬気を抜いたのがいけなかった。
抱きついたままのセンパイが、何かに気付いたようにくすりと笑った。
耳元に唇を寄せて息を吹き込むように囁かれた言葉は、俺の脳天からつま先までを走り抜けた。
「コッチの熱も、鎮めとく?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
このヒトはどうして、いつもこうなんだッ!
落ち着け、俺。
センパイにとってはこれは単なるコミュニケーションでしかない。
そう、このヒトは、握手をするのと同じ感覚で”こういうコト”ができる人なんだから。
身体を繋いだだけで自分は特別だなんて思っちゃいけない。
この人の《秘宝(しんじつ)》を手に入れたいなら、こんなものにすがっちゃいけない。
判ってる。判ってはいるが……
(くっそ〜〜〜ッ!)
………
…………
……………ぷつん。
もういい。鎮めてくれるッてんなら鎮めてもらおうじゃぁネェか! ちくしょう!
ワカメ頭よ悔しがれ! 今夜は俺が、センパイを独占してやる!
そしていつかは俺が頂上(てっぺん)獲ってやる!
頑張れ俺! 負けるな俺!
「夷澤凍也、ゴチになりますッ!!」
…… Searching next area ……
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……画面フリーズってことで…。
あ、あはははは……ゴメンナサイ。
これ以上は夷澤が不憫で書けましぇ〜〜ん^^;
next area (この先の展開)なんて…
後はヤりまく…ごほっごほっ…
笑っていられるうちに終わっとけ、自分。
ああああああああああ、アロマの上段蹴りが怖いよぅ(びくびく)