霊感探偵倶楽部・姉崎探偵事務所シリーズ
愛してるなんて言わない
失くしたものが多すぎて
欲しがる事をやめたお前に
愛など説いても無意味なのだろう
愛する事の切なさも
愛される事の歓びも
判らないまま すり抜けてゆく
漆黒の瞳に潜む紅の憂鬱と
蒼白な肌に浮かぶ鱗の刻印が
言葉の意味さえ判らぬうちに
お前の愛を閉じてしまった
だから
愛とは告げずに この痛み伝えよう
お前の身体に 名もない碑を打ち込んで
熱い猛りも 苦い後味も
それとは知らずに呑み込むがいい
俺のこの身が朽ち果てた時
頬を撫でる風に お前は俺の声を聞くだろう
その時お前は愛という言葉の意味を知る
だから
愛とは告げずに ぬくもりを与えよう
お前の魂に 俺の名が刻まれるように
熱い接吻づけも 甘い囁きも
それとは知らずに受け取るがいい
俺の魂が器喪くした時
髪に絡む風に お前は俺の指を見つけるだろう
その時お前は永遠を手に入れる
いつか訪れるその日まで
愛してるなんて言わない